特許法 特許権とその制限
第3節 特許権とその制限
1.特許権の効力と存続期間
(1)特許権の効力 T.p.40‐43
特許権=「特許発明」を「業として」「実施」できる権利(68条)
発明の種類:①物の発明、②方法の発明、③物を生産する方法の発明
実施(2条3項):①物の発明(1号)、②方法の発明(2号)、③物を生産する方法(3号) ※独占的に利用できる行為の範囲
実施に関連する行為:譲渡・輸出のための所持(101条3号・6号)※T.p.77
(2)存続期間 T.p.44-45
存続期間が存在する理由:創作のインセンティブと利用の促進のバランシング
出願日から20年(67条1項)。ただし、最長5年の延長制度あり(同2項)
2. 特許権の制限
(1)試験・研究のためにする実施 T.p.45-47
69条1項
制度の趣旨:①新規技術、改良・応用技術の開発、②特許権者の経済的損失が少ない
メシル酸カモスタット事件(すい臓疾患治療剤事件)
⇒ 後発医薬品の製造承認を得るために行う試験も本項にいう「試験・研究」に該当すると判断
(2)消尽理論(法理) T.p.47-55
イ)総論
消尽理論=適法な拡布(譲渡等)により、その後は特許権の行使を制限するという考え方
消尽理論の根拠:①取引の安全、流通秩序の維持、②二重利得の禁止
ロ)消尽理論の応用場面1:リサイクル品
①生産アプローチ(→「生産」があれば特許権侵害)
②消尽アプローチ(→「消尽」に該当しなければ特許権侵害)
③製造アプローチ(→新たに特許製品が製造されたと認められれば特許権侵害)
インクカートリッジ事件最高裁判決(上記③を採用)
ハ)消尽理論の応用場面2:並行輸入
並行輸入とは…内外価格差、正規ルートと並行輸入ルート
並行輸入が特許権を含む知的財産権の侵害に該当するか?
BBS事件(最判平成9年7月1日)
1)上記①および②の理由に加え、③社会公共の利益との調和、を挙げ、「国内消尽」について肯定
2)①外国で同じ特許権を有しているとは限らない、②有していた場合でも、海外と国内のそれぞれ権利行使をしたとしても二重の利得には当たらない(それぞれの市場で利益をあげる権利を有する)、として、「国際消尽」を否定
3)黙示の許諾説(類似の考え方)を採用し、当該並行輸入についての権利行使は認めず